温かさを感じる物語 | [書評]フルーツバスケット

フルーツバスケット
著者: 高屋 奈月
ISBN:4592171616 / 発売日:1999-01
出版社.: 白泉社

どんな話なの?

女手一つで自分を育ててくれていた母親を事故で亡くした女子高生の本田透が、異性に抱きつかれると十二支の動物に変身してしまう摩訶不思議な体質を持った草摩家に住み、彼らの闇と苦しみに寄り添う日常的ファンタジー。

草摩家の人間の一部は、異性に抱き着かれると動物に変身してしまう。そんな体質のせいで、秘密を知ってしまった友だちの記憶が消されてしまったり、恋人との結婚がダメになってしまったり、お母さんと引き離されてしまったりといった経験をしてきた草摩家の人たち。それぞれが悲しい思いを抱えながら生活していた。しかし、透はそんな彼らの秘密を知っても怖がったり気味悪がったりしなかった。

母親を亡くし、住むところに困りテント生活をしていた透は同級生でもある草摩由希の家に住むことになった。日常の中で次々に出会っていく草摩の人間たちに寄り添い、癒しを与えていく。

透の存在

草摩の人間は、みんなどこかに傷を持っている。透はそんな彼らに、お母さんがかけてくれる毛布のようなふんわりとした温かさを与えてくれる。

天然で純粋で人を疑うということを知らない透の母親は元レディース。父を幼いころに病気で亡くした透は、母からたくさんの愛情を注いでもらった。母から透へ受け渡す言葉の一つ一つがこれまた温かい。

「欲望は誰でも生まれながらに持ってるから理解しやすいけど

良心(やさしさ)は個人個人の手造りみたいなモンだから
誤解されたり ギゼンだと思われやすいんだよな

でも透は 信じてあげな

疑うなんて 誰にでもできる簡単なことだし
透は信じてあげられる子になりな

それは きっと
誰かの力になる」

誰かの幸せを願って、誰かのために涙を流して、誰かのために一生懸命になって、そんな透が周りの人を温かく笑顔にしていく。きっとこれを読んだ人の心にも響くのではないだろうか。

今ある幸せ

草摩家の人間は、普通ではないがゆえに抱えている傷がある。しかし、透とかかわることで、今ある幸せや自分の大切さに気付いていく。何でもないようなことが本当は有り難いことであるかもしれないということを教えてくれる物語である。

フルーツバスケット
著者: 高屋 奈月
ISBN:4592171616 / 発売日:1999-01
出版社.: 白泉社

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