誉田哲也の真骨頂 | [書評]幸せの条件

幸せの条件
著者: 誉田 哲也
ISBN:4120044157 / 発売日:2012-08-24
出版社.: 中央公論新社

誉田哲也ファン必読の書

誉田哲也さんの作品は警察小説や青春小説と言った幅広さをもっています。

警察小説では「ストロベリーナイト」からはじまる姫川玲子シリーズが有名ですが、「武士道シックスティーン」をはじめとする青春小説も人気でどちらも映像化されています。誉田哲也さんの執筆する警察小説が好きな方の中には、青春小説に食指が動かないという方もいらっしゃると思います。

そんな方にお勧めなのが今回紹介する「幸せの条件」です。警察小説でもなく青春小説でもないですが、誉田哲也だからこそ書けるといっても過言ではない小説になっています。

農業について知りたい方にも

主人公である平凡なOLがなぜだか農業に挑戦することになりその後の苦労や葛藤、心情の変化が描かれています。

農業の工程が細かく描かれており日本の食料自給率のからくりについても触れられていますので、農業に少しでも興味のある方は抵抗なく読み進めることができます。農業ののの字も知らない方も新しい分野の開拓にお勧めの一冊となっています。

幸せの条件

一読すると題名の通り幸せの条件とは何なのかを改めて考えさせられる本です。物語はどこにでもいそうな平凡なOLが生活しているというところから始まりますが、そのOLが作中を通して成長していく過程が描かれており、周囲の登場人物が主人公に惹かれていくようになります。読み手側も苦境に立たされる主人公を思わず応援したくなります。

印象深かったのが元にいた会社の社長との会話で社長が主人公にこう語る場面です。

お前は、お前自身が必要とする生き方を、見つけてきた。・・・・・・違うか?自分は、これをやって生きていきたい。これをやって暮らしていきたい。生きるって、実はこういうことなんじゃないか。

その前後も会話が続いているのですが主人公の成長を社長が語ることで読み手としても感慨深い一場面になっています。また自分の生き方はどうなのだろうかと考えさせられる作品でもあります。

幸せの条件
著者: 誉田 哲也
ISBN:4120044157 / 発売日:2012-08-24
出版社.: 中央公論新社

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