若いIT技術者にこそ知ってほしいコンピューターで革新を起こした人々 | [書評]モダン・コンピューティングの歴史


コンピューターの歴史は面白い

この本は、2008年出版でして、かつ内容は2001年までのコンピューターとインターネットの歴史について書かれています。タイトルが「モダン」つまり「現代の」とも言えますが、2001年までについてですので、「近代の」と言う意味合いが強いと言えそうです。

大学でコンピューター専門の学科で学んだ人なら、ある程度知っている内容かもしれませんが、本書は本文だけでも400ページの単行本ですので、結構読み応えがあり、知らないことも多いのではないでしょうか?

パソコン通信がそろそろ終わりかけて、JUNETと呼ばれた日本でのインターネットを使って仕事をしながら、ネットニュース(今のYahoo!ニュースとかのニュースとは違いますよ)で最新情報や、情報交換をしていた頃が懐かしいおじさんの私としては、本書を読んでいて、コンピューターの黎明期からインターネットの登場までの多くの人たちの夢が語られていて、ワクワクします。

コンピューターに夢を見た人々

本書は年代別に章が分かれています。

第1章 商用コンピューターのあけぼの 1945-1965年
第2章 コンピューター時代の到来 1956-1964年
第3章 ソフトウェア黎明期 1952-1968年
第4章 メインフレームからミニコンピューターへ 1959-1969年
第5章 大型コンピューターの全盛期とシステム/360 1961-1975年
第6章 マイクロプロセッサの衝撃 1965-1975年
第7章 パーソナルコンピューター 1972-1977年
第8章 知性の増大 1975-1985年
第9章 ワークステーション、UNIX、インターネット 1981-1995年
第10章 インターネットの時代 1995-2001年

登場する人物は、ハワード・エイケン、フォン・ノイマン、プレスパー・エッカート、ジョン・モークリー、ケン・オルセン、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、リーナス・トーバルズなどです。

非商用コンピューターのころは、ハーバードマークIやユニバックが登場し、商用コンピューターとしてエニアックが登場します。ここでは、黎明期で忘れてはならないエッカート+モークリーのペアの活動が書かれています。二人によるユニバックのリリースまでの苦労が語られています。エッカートとモークリーの作った会社ECCは、スペリー社になり、バロース社と合併し、今も残るユニシスになりました。

また、今では当たり前のプログラム内蔵式を考案したフォン・ノイマンについて書かれています。ここでは、フォン・ノイマン・アーキテクチャの特徴が書かれていますが、その特徴は、よく知られた「プログラム内蔵式」ということだけではないことがちゃんと書かれていて勉強になります。

第2章になると、ハネウェル、GE、RCAなど有名企業のコンピューターに対する対応が書かれています。しかしやはりここで登場するのがIBMなわけです。IBM強し。

第3章のソフトウェアの黎明期で最初に出てくるのがなぜか「FORTRAN」です。間違っているわけではなく、FORTRANをソフトウェアの代表として取り上げ、ソフトウェアの簡単な定義からハードウェアの発展とどのように関連するのかが書かれています。実際のコンピューター言語の歴史については、途中で出てきます。もちろん最初は「アセンブラ」(マシン語、アセンブリ言語)です。

面白いのは、総コストに占めるハードウェアとソフトウェアの割合が図で示されており、1965年にはハードウェアが80%を占めていたものが、1985年にはソフトウェアが80%を占めていることです。

個人的には、システムの売上に占めるソフトとハードの割合が、コストと同様の形になったのはもう少し後の1990年代以降かなと思います。それまでは、ソフトは、ハードにくっついてくるものと思っていたお客さんが多かったので、営業さんは大変だったのです。

そして、ついにOSが登場します。

第4章の主役はDECです。DECの文化と歴史が書かれています。

第5章は、泣く子も黙るIBMシステム/360についてです。初めて知ったのですが、360の意味は、

事務処理から化学計算まで360度あらゆる顧客の用途に適応しうるコンピューター

だそうです。ここでさらに重要なことが書かれていました。

システム/360の一番のセールスポイントは、単体の製品としてではなく、小型から大型まですべての製品ラインを持つコンピューターとして提供されたことにある。

社運をかけたこの製品は大成功を収めました。

第6章は、フェアチャイルド、テキサスインスツルメンツ、そしてインテルに話が繋がっています。このICの歴史も面白いです。

第7章は、インテルの8080マイクロプロセッサを使用してPCが生み出され、そこからDOSであるCP/M登場しています。

第8章で、ようやくアップルIIが登場します。ページ数は少ないですが。詳しく知りたい方は、書籍「スティーブ・ジョブズ」を読みましょう。そして、IBM PC、MS-DOS、マッキントッシュへと話が続いていきます。

第9章では、UNIXがコケた理由とインターネットの始まりが書かれています。

第10章では、Microsoftの台頭と、Javaなどの(当時の)最新技術について書かれています。最後は、復活のUNIXとなるLinuxの話でおしまいとなります。

最後に

この本には、まだスマホもSNSも登場しません。多くの人は、それらがどのように登場してきたか、ここ10年程度の話ですので、ご存知でしょう。それよりも、今まさに利用しているパソコンやスマホにつながるコンピューターの歴史に、多くの挑戦者と企業が関係しており、悲喜こもごものあった事実を知ってほしいと思います。


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