【書評】言葉と身体をめぐる哲学的主題が大阪弁の饒舌な文体で軽妙に語られている点に注目! | 乳と卵
言わずと知れた川上未映子の芥川賞受賞作。もし小説が、ふだん私たちが日常なにげなく通り過ぎている事柄に対する違和感を気付かせる「声」の役割を担っているのだとしたら、現代の日本人作家のなかでこの作者ほどその違和感に気付くすぐれた感受性を持った人はいないと思います。
『乳と卵』を読んで、私は人間存在をめぐる言葉と身体の関係性について深く考えさせられました。言葉と身体の問題は考えてだすとすごく奇妙で、解けない謎があるんですよね。そうやってそうした問いは哲学の分野で繰り返し議論されてきたことですが、それを川上未映子さんは大阪弁の止まらないお喋りのようにリズミカルな文体で、現代に生きる女性のごく日常的な生活を描きながら主題として浮き彫りにさせたのです。
最初に読んだときはこういう書き方があったのかと驚きましたし、最先端のアートみたいにかっこいいやり方だと思いました。その気持ちは今でも変わりません。やはりこの小説は最高にかっこいいアートだと私は思います。
回答者:30代 女性
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