ディープラーニングと海馬の役割について| [書評]脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす


人工知能は人間の能力を超えられるか?

人工知能が人間の知能を凌駕し、社会に大変革が起こる技術的特異点が2045年頃の訪れるという説があり、この説を「シンギュラリティ」と言います。

本書は、これまでの脳の分析、ニューロブーム、人工知能の研究、ディープラーニングの成果を解説し、心まで持つ人工知能が存在するようになるか検討を行っています。

本書はディープラーニングの本ではなく、これまでの人工知能研究の歴史書と思ってもらって読んでもらえれば良いでしょう。ブルーバックスらしく、数学で脳を表す部分では、素人ではよく分からない数式が登場しますが、分かる人は読む、分からなければさらっと流しても本の内容は十分わかります。

本書の構成

人工知能の最初は、「脳」の分析から始まっています。脳がどうのように動いているかを、どのように情報を蓄積しているかを解説します。続いて、脳を理論で捉えるニューロモデルの3回のブームについて解説しています。次に、脳の学習について数理の観点から述べています。ここが意外と面白く、現在隆盛のディープラーニングの基礎となっていますので、読んでおきましょう。

つづいて、IT技術者なら好きな人工知能の歴史が書かれています。IBMのチェスプログラム「ディープブルー」から、テレビ番組「ジョパディ!」、さらにはAlphaGoの話に続きます。

最後に、「心」の分析を通して、シンギュラリティは起きるのかどうかを検討します。

私の注目ポイント

脳については、短期的記憶と長期的記憶の海馬の役割についての内容が面白いです。不幸にして海馬を取らざるを得なかった人の症状は興味深いです。

また、作者がニューラルネットワークの著名な研究者であるので、ところどころ登場するコラムが、自身の長い経験から語られていて面白いです。半分コラムを使って文句を言っているようにも読めます。

最後に

本書により、話題のディープラーニングは、突如登場したわけではなく、長い脳の分析から神経回路の研究などを通して成り立っていることがわかります。


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