儲かるコツは、数字の前に「センス」が必要 | [書評]さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学
会計学の入口は、ごく身近な日常にひそんでいる
数学はからきしダメで、コテコテの文系である私がこの一冊を手にとった理由。それはこのキャッチなーなタイトルにありました。
「さおや~さおだけ~」と近所をトラックで周回するさおだけ屋。
(さおだけ屋以外の)誰もが一度は「あれってちゃんと儲かってんの?」と疑問に思うはずです。この本では、いかにも儲からなさそうなのに何故か潰れないビジネスが、どうやって儲かっているのか。そんな身近な疑問を会計学とからめて解き明かす一冊です。
思えば自分の身近にもあった、なぜか潰れない「あの店」
この本で解説されているさおだけ屋は詳しく書くとネタバレになってしまうので伏せますが、ちゃんと利益が出る仕組みを巧みに利用しています。
それに似ている商売をしているのが、私の自宅の近所にあるおまんじゅう屋。おまんじゅう屋といっても老舗の銘菓、という訳でなく、一個100円かそれ以下。お客さんもほとんどなく、夏はちょっと色気を出してかき氷を出すくらいです。
小学生のころは何の疑問も持たずおやつを買いに通っていたものですが、だんだん社会の仕組みを知っていくと、「この店って、こんな安いまんじゅうだけで利益出てんのかな?」と心配になってきました。
しかしこういったおまんじゅう屋の「本業」は、老人ホームのおやつ、お寺や学校、幼稚園、地域の集まりといった場への仕出し。地域の顧客をいくつも抱えているので、私が心配するまでもなく、定期的にしっかりと利益を上げていたのです。
儲かるコツは、数字の前に「センス」である
数字に強くなる必要など全くなく、センスさえ持ち合わせていれば、世の中のいろいろな殊に惑わされずに済む。
会計学のプロである著者がこう言っているくらいですから、会計学が数字だけの世界ではない事は明瞭です。
さおだけ屋、おまんじゅう屋のように、見るからにガッツリ儲けているように見えないけれど、外からはわからない巧妙なカラクリがそこには潜んでいるのです。ただ数学ができる、会計をやっている、それだけでは成り立たない「センス」が成功の証なのだと教えてくれる一冊です。