読み手の心を開くことができる「役割期待のずれ」とは? | [書評]「怒り」がスーッと消える本


「怒り」を感じることで、最も辛いこととは?

「今日も腹が立つことがあった、怒鳴りつけてやろうと思ったけど、ぐっと我慢した」そんな思いで帰宅する途中、ふらりと立ち寄った本屋で見つけた本です。読みすすめるうちに、まるで神様が私に届けてくださった一冊のように感じました。

「怒り」はそれ自体不快なものですが、もっと辛いことはそんなことで怒る自分自身のことを「ダメな人間」だと感じること。この本はそんな気持ちを十分にくみ取ってくれます。「怒らなくてはならないような理不尽な目にあっただけでも可哀想なのに、その上、自分自身を責めるなんて、自分が可哀想すぎる」という発想はまさに救世主。

怒りで行き場を失った心が、平穏な状態へと導かれていく一冊なのです。

「読み手の心を開く」ことができる本

怒りを感じる原因として著者があげているのが「役割期待のずれ」です。知らず知らずのうちに人は、相手がこうあるべきという期待を抱いており、その期待を裏切ることに対して「怒り」を感じると指摘しています。しかし、基本的に相手を変えることは不可能であり、「受け止め方を変える」「受け流す」「放置する」などの技術を駆使して、うまく対処していくことが、怒りにふりまわされないコツだと語っています。

読み進めることで、読み手は、自分の怒りの正体が何であるのかを客観的に分析でき、当たり前のことではあるはずなのに忘れていた「相手を変えることは不可能だ」という事実を再認識します。

だからこそ、その後に書かれた対処法は、読み手の開かれた心に、実にストレートに染み渡ります。いくら良い内容でも、読み手が「そんなの嘘だ」と心をブロックしてしまえば、本としての意味を成しません。その意味でもこの本は実に有益な一冊であると言えます。

「怒っている人」から被害を受けないコツ

またこの本には「怒っている人」から被害を受けないコツについても書かれています。その項の序文にはこう書かれています。

他人の怒りに対してどう「行動」するか、ということと他人の怒りにどのような「心の姿勢」で向き合うか、ということは基本的には別の次元にあることです。

「どういうこと?続きが読みたい!」と感じるのではないでしょうか。

けっして「怒っている人」に対して、ケンカしなさいとも無視しなさいとも言っていません。その上、我慢する必要さえもないと著者は語っています。対人関係療法の専門の医師が著者である本だけに、実に論理的で、実践的なこの一冊。あなたのイライラした日常を劇的に変える一冊であると、自信を持ってお勧めできます。


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