プラットフォーム・リーダーシップの重要性とは何か | [書評]プラットフォーム・リーダーシップ―イノベーションを導く新しい経営戦略


プラットフォーム・リーダーシップの重要性とは

プラットフォーム・リーダーシップとは、イノベーションを起こす時に、自社だけでなく、他者を巻き込みながらも、リーダー企業としてその「プラットフォーム」を提供することで、競争優位を維持しながら、全体をマネジメントすることです。他者を巻き込んでイノベーションを起こすという考え方は、オープンイノベーションともつながります。

第1章序論の冒頭で、インテルのジョンソン氏の文が引用されています。

自社のイノベーションの価値が高まるのは、他者のイノベーションと結びつくときです。

自動車や、VHSビデオデッキの時代は、「コア」企業が中心となり、サプライヤを従える、パワーバランスがありました。しかし、現在では、「コア」企業の地位が安泰であることは稀になってきています。例えば、私が知る範囲でも、NECはPCの世界で「コア」企業でしたが、その後、ガラケーで連合したり、半導体で合弁したりしました。残念ながら、これはイノベーションではなく、衰退でしたが。

この本が述べているのは、イノベーションにおいても、1企業での実現は難しく、複数の企業を巻き込んでいるということです。現在のイノベーションでの良い例は、Googleでしょう。例えば、Androidスマホは、多くのメーカから発売されていますし、多くのキャリア(オペレータとも言います。NTTドコモとかです)の回線で使用されています。多くの企業が関係していても、中心となるリーダーは、Googleです。Googleは、Android OSを保持し、コントロールすることで、協力各社とともにイノベーションを起こします。決して、独善的ではなく、協力的にです。これが、プラットフォーム・リーダーシップです。

プラットフォーム・リーダーが取った戦略たち

この本は、最後の結論で、プラットフォーム・リーダーシップの本質を述べています。それまでの章は、実例が示されています。インテルのPCIバス、USBの話、Microsoftの.NETの話、シスコの話、パーム(今は亡き)、NTTドコモ、Linuxの話が書かれています。それぞれの戦略について、内情、知見、結果または結果予想が書かれています。この本は、まだまだ売れているものですが、原書の英語版の出版が2002年ですので、「結果予想」については、すでに結果が出ているものばかりです。

しかし、それぞれのリーダーシップ企業がどのような戦略を行ったかは、現在にも通じるものがあり、勉強になります。特に多くのページを割いて書かれているインテルの戦略については大変参考になります。

オープンイノベーションを実現する上で必要なこと

プラットフォーム・リーダーシップは、日本の大企業であれば必ず一度は行っているはずです。公表しているところでは、NECは次世代ネットワーク(NGN)に関して行っていました(NGNはもう死語ですが)。

Facebookのようなインターネット企業が単独でイノベーションを起こすことも継続していくことは間違いありません。しかし、既存の企業も手をこまねいているわけにはいきません。競合他社を含めたオープンイノベーションの実現を考える上で、プラットフォーム・リーダーシップ戦略を取ることは一つの有力な選択肢です。


あわせて読みたい