オジサン達は若者に何を期待しているのか? | [書評]だから日本はズレている

だから日本はズレている
著者: 古市 憲寿
ISBN:4106105667 / 発売日:2014-04-17
出版社.: 新潮社

「最近の若いヤツは使えない」会社でオジサン達から良く聞く台詞だ。しかし一方で、テレビではどこかの会社の偉いオジサンがこんな事を言っている、「皆さんの若い力に期待しています」と。一体オジサン達は我々若者に何を思っているのだろうか。

そして一方では失望され、また一方では期待される我々若者は、この現代社会でどのように生きて行けば良いのか。本書では若手社会学者である著者が、これらの疑問に対するヒントを、提示している。

若者に期待しすぎる社会

現代の日本には閉塞感が溢れている。バブル崩壊以降停滞し続けている経済成長、減らない国の借金、進む少子高齢化等々、将来に希望が持てなくなるような事柄ばかりが目につく。オジサン達はそんな閉塞感を打破してくれるような存在、著者の言葉を借りれば「救世主」の到来を待ち望んでいるのだ。

不安な時代に、人は救世主を求める。そして救世主が、世界をまるで変えてくれるかのような期待を抱く。

期待はするけど権利は与えない

それでは救世主と期待をかける若者に、オジサン達はどんな事をしてくれているのか。大した事はしていない、というのが本書での結論である。以下に著者が大企業のトップと話した時の経験談を引用しよう。

その人はしきりに「若者に頑張ってほしい」「我が社でも若手社員を大事にしている」と言っていた。大変結構なことだと思って、「じゃあ意思決定機関に若者は入っているんですね」と聞いたら全くそんなことはなかった。

それは当然の事だ、と思うかもしれない。だが、世の中には若くして経営者として成功した人が多くいる事からわかるように、経営センスに関しては年齢による有利不利はそれほど無い。若者に期待するのであれば、もっと積極的に大きな仕事を任せていくべきなのだが、現代日本の多くの企業はそのような仕組みになっていない。

若者はどうすれば良いのか?

では若者に期待しながらもそれを活かす社会になっていない現代日本で、我々若者はどのように生きるべきなのか。かつての安保闘争のように、若者の権利を主張する政治活動をすれば良いのだろうか?著者はそうでは無い、と言う。

火炎瓶を投げつけて権力に対抗した気になるのではなく、今の社会と適切な距離を保ちながら、可能なオルタナティブを探る。そんな「やさしい革命」が始まっている。

ここで言う「やさしい革命」とは、頑張って仕事をして沢山お金を稼ぐ、といったこれまで一般的とされてきた生き方を辞め、少ない収入でも豊かな時間を過ごす生き方をしようとする試みだ。例えばシェアハウスに住んで家賃等の生活費を減らし、仲間と共に楽しく生活する、といった生き方がこれにあたる。

国家の存在感が薄くなる時代をどう生きるか

情報が溢れ、googleやAppleといった巨大企業が時に国家以上の存在感を持つ現代において、国家に働きかけて社会を変革する、というやり方は古いものとなりつつある。それよりも自分とその周りから少しずつ社会を良くしていくやさしい革命が結局の所これからの社会を変えていくのでは無いだろうか、と本書は提示している。

だから日本はズレている
著者: 古市 憲寿
ISBN:4106105667 / 発売日:2014-04-17
出版社.: 新潮社

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