「不安」の正体を解き明かし、大丈夫だよと語りかけてくれる本 | [書評]その不安、ニセモノではありませんか?――「決められない」「自信がない」「人間関係がしんどい」あなたに


「不安」の正体を解き明かし、大丈夫だよと語りかけてくれる本

自分には不安なんてまったくないという方、まずいないと思います。「不安」自体、その正体が漠然としたものが多く、あえて向き合うことを避けたいような内容が多いもの。よくわからないけど、なんがかモヤモヤしてすっきりしないという感覚がつきまといます。

そんな「不安」の正体を解き明かし「大丈夫ですよ、心配ないですよ」と語りかけてくれるのがこの本です。「不安」と向き合うなんて、読むのが辛そうだと感じるかもしれませんが、実際に読むと、ページをめくるたびに気持ちが軽くなり、好ましい自分に変化していけるような感覚を味わえます。

ポジティブになろう」などという陳腐な内容ではない!

よく不安を取り除くために「ポジティブになろう」「楽観的になろう」「とにかくやってみよう」などという内容が書かれた自己啓発本を見かけますが、そんな抽象的なアドバイスによって行動することに対して、警告を発しているのもこの本の特徴です。

例えば著者は不安を減らすためには「ちょっとした勇気」を出すことが大切であると語っています。しかし、その勇気という概念は要注意なものであるため、次のような考え方を提案しています。

さて、この「ちょっとした勇気」の「勇気」と「蛮勇」(向こう見ずな勇気)とはどこが違うのでしょうか。多くの人が、その違いは「どれだけのリスクをとるか」という量的な問題だと考えているのではないかと思います。
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「勇気」と「蛮勇」の違いは、量的な違いではなく、「自分をどれだけ大切にしているのか」という質的な違いなのです。

つまり「勇気を出すこと」とは「自分を粗末にすること」ではないということ。言われてみるとそうなのですが、この点を勘違いしている人が実に多いように思えます。読み進めるたびに読者は自分の思い込みに気が付き、「不安」から逃げ惑うのではなく、正面から向き合える自分へと変化していけるのです。

清々しい気持ちと確信を得られる一冊

不安を減らすためには「勇気を持つ」こと以外にも「ジャッジメントをやめる」「心の姿勢を整える」「自己効力感」を持つなどが必要であると述べられています。一般的な自己啓発本は読み終えると「今のままの自分ではいけない、明日からはこう変わろう」と追い詰められたような気持ちになるのに対し、この本は「すっかり忘れていたけど、自分の中には、もともと優しい気持ちがあった。明日からはそれをを思い出して行動しよう」という清々しい気分になります。

この本を読むと「心の在り方」次第で人間は、ずいぶんと変わることができるし、日々の生活を質の良いものにしていけるのだと感じます。わかりやすい上に、無理強いすることのない内容ですので、すんなりと自分の心に響いてきます。文章全てから感じられる思いやりや愛情が、内容を後押しするのかもしれません。「不安」にとらわれすぎて、大切なものを見失いかけている人にぜひ読んでみてほしい一冊です。


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