「嫌われる勇気」というタイトルの意味の深さとは | [書評]嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え


青年と哲人の対話を用いて、アドラーの思想を説いていく

本書は、世界には幸福などありえないと考えている青年と、人は今日からでも幸せになれると説く哲人の対話形式となっています。

アルフレッド・アドラーの思想を用いて「世界はどこまでもシンプルである」と説く哲人に対して、青年はそんなことはありえないと主張し、青年が感じる矛盾や疑問をぶつけていきます。哲人はそのたびに青年に説明をし、青年はだんだんとアドラーの思想を理解していきます。

哲学に関する専門書をいきなり読むことはなかなかハードルが高いことに感じてしまいますが、本書は特別な知識がなくても、登場する青年と同じ目線で内容の理解を深めていくことが出来るので、初めてアドラーの思想について読む人に大変オススメの1冊であると思います。

競争社会に疲れてしまった人にオススメの1冊

本書を読み進めていき内容を自分に当てはめて考えてみると、様々な面において自分自身を見つめなおし、向き合うこときっかけになるのではないかと思います。例えば、他者よりも優れていたいという印象を受ける「優劣性の追求」という言葉について、アドラー心理学では「自らの足を一歩前に踏み出す意思」であると説いています。それについて本書に登場する哲人は以下のように説いています。

人生は競争ではない

誰とも競争することなく、ただ前を向いて歩いていけばいい

いまの自分よりも前に進もうとすることにこそ、価値がある

競争社会で生きる人にとって、他者と比較するのではなく、自分自身を見つめて原点に返ることが出来るような言葉ではないでしょうか。

本書を読むとわかる、タイトルの意味の深さ

本書を読み進めると「嫌われる勇気」というタイトルの意味の深さに気付かされます。本書の中に登場する哲人は以下のように青年に説いています。

われわれは「他者の期待を満たすために生きているのではない」のです。

あなたは、あなただけの人生を生きています。誰のために生きているのかといえば、無論あなたのためです。そしてもし、自分のために生きていないのだとすれば、いったい誰があなたの人生を生きてくれるのでしょうか。われわれは、究極的には「わたし」のことを考えて生きている。そう考えてはいけない理由はありません。

この哲人の言葉を読んで、嫌われても気にしない勇気を持つという単純なことではなく、そもそも自分の人生なのだから、人から嫌われるか、どう思われるかなどは全く関係のない事なのだと思い出させられました。そんなことは気にする必要すらないのだという、言われてみれば当たり前で納得のいくことを再認識させてくれ、ある種の“勇気”を与えてくれる言葉なのではないかと思います。


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