孤独な二人だからこそ分かり合える価値観 | [書評]暗いところで待ち合わせ

暗いところで待ち合わせ
著者: 乙一
ISBN:4344402146 / 発売日:2002-04
出版社.: 幻冬舎

思いつかないような奇想天外なストーリー

物語の設定は、目が見えない主人公のミチルが一人で暮らしている家に、ある事情があって警察から逃げているアキヒロという男が忍び込み、なんとそのまま住み込んでしまうという奇想天外なものです。

深い暗闇の向こう側から、空気を伝わって、何かがいるような漠然とした気配を感じた。

ミチルは盲目ですが、アキヒロが放つ気配を感じ取り、家に自分以外の何かがいることを感じます。初めは勘違い、もしくは動物か何かだと思うのですが、やがてそれは紛れもなく人であると結論付けます。

普通の女性なら取り乱してしまいそうなものですが、ミチルはとても冷静な女性で、こちらが相手の存在に気付いたことが相手に分かれば余計に危険かもしれないと考えて何も気づいていないふりをします。

そこまでは冷静な主人公だと思うことが出来るのですが、誰かに助けを求めるチャンスはいくらでもある中でミチルは何とそのままその何者かがいる家で普通に暮らし続けてしまいます。こうなると冷静な判断なのか、またはまともに判断が出来ていないのかと主人公が心配になってきて、一気に物語に引き込まれていきます。

孤独な二人だからこそ分かり合える価値観

ミチルもアキヒロも、孤独な人生を歩んでいるという共通点があります。二人とも、積極的に人と関わることはせず、むしろ一人孤独に生きていくことを望んでいるような生活を送っています。ミチルにもアキヒロにも恋人はおらず、ミチルには友人が1人いますが、家族はなく、親戚づきあいなどもありません。アキヒロには家族はいますが遠くに住んでいて、身近に親しい友人などはいません。

孤独な生活を求めているような二人ですが、そんな二人が一つ屋根の下で生活をともにすることによって、ある種の関係が生まれます。その関係は、直接の関わりは持たないように、互いにとても用心して距離を取りつつも常に見守り合うような不思議なものです。

初めはその不自然な関係に違和感を覚えますが、触れ合えば消えてしまうと言わんばかりの二人の慎重な関係の描写は、物語を読み進めていくうちにとても不器用だけど純粋なものに思えてきます。

暗いところで待ち合わせ
著者: 乙一
ISBN:4344402146 / 発売日:2002-04
出版社.: 幻冬舎

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