「道雄は最後の息を引き取るまぎわまで、父の名も、母の名も呼ばず、ただあなた様のお手紙を抱きしめ… | 本で出逢った感動の名言
本で出逢った名言・名セリフ
「道雄は最後の息を引き取るまぎわまで、父の名も、母の名も呼ばず、ただあなた様のお手紙を抱きしめ、あなた様のお名前のみ呼び続け申候」
孤島の鬼 より
そのセリフに感銘を受けた理由
江戸川乱歩著の孤島の鬼はいわゆる同性愛文学の白眉であると思います。体裁はミステリーではあるのですが、登場人物の心情の機微が大変よく書かれていると思います。いまでいうところのBLにあたるのではないでしょうか。
しかしながら、優れた作品というものはジャンルを超越します。最後の、主人公の友達の父親からの手紙には一人の人間がどれ程深く人を愛していたかを端的によく表していると思います。本人に言わせるのではなく、第三者の口から語られることによって、より本人の感情が現れていると思います。
どれだけ人を想っても、報われなっかた思いを今際の際に吐露する、という場面はともすれば、いやらしくなりがちですが、乱歩はそこを見事に描ききっています。さすがに戦後大衆文学の大家であると感心いたしました。
回答者:20代 女性
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