想像もしなかった「宇宙から飛来した地球人」の物語で価値観が変わる | [書評]星を継ぐもの

星を継ぐもの
著者: ジェイムズ・P・ホーガン
ISBN:448866301X / 発売日:1980-05-23
出版社.: 東京創元社

複雑なパズルが完成する快感

「そう、今さら言うまでもなく、謎は解かれた。文字通り、人間は空から降って湧いたのだよ」p288

従来からSF小説は手にとっていましたが、複雑な全体のパズルがひとつの絵として最終的に完成するまでの過程の面白さは、他の本では追随を許さないレベルにありました。
このSF小説を読んだとき、実際の人類の歴史にもこういった隠された歴史があるのではないかと想像してしまうほどでした。

通説と矛盾するオーパーツとの対面

まず月面で発見されたルナリアンの存在が、学者らを混乱に陥れます。物語の主人公は、物理学者ハントと生物学者ダンチェッカーです。彼らは最初から最後までを通じて、それぞれの学問的な見地から飛び出してきた問題に対する仮説を出し続け、最終的な結論に結びつけていきます。

現実に自分たちの信念や通説と矛盾するオーパーツが目の前に提示されたとしたら、学問と学者は従来の組み立てた仮説について、プライドを捨てて全て崩さなければ説明できなくなるのでしょう。物語のなかで地球の学者はみな、そんな状況になったことを想像してみると、とてもワクワクとする思いがして読み進めることができました。

SFのリアリティ

物語の核心は、従来は地球や火星のの外側の軌道にあったという惑星ミネルヴァの存在です。いま実際に太陽系には、火星の外側に小惑星帯が存在しています。その事実を利用して、それらの小惑星帯はかつての岩石型惑星ミネルヴァであったことが明らかになったのです。SF小説は事実を前提として話をふくらませるものですが、小惑星帯がかつて人類が住む惑星だったという発想は驚きに満ちたものでした。

この本を読んでいくと、小説に書いてあるの通りの出来事が、実際の太陽系で起きていたんじゃないかという思いが、ふつふつとこみ上げてくるようになりました。地球上で発見されているという数々のオーパーツ、月面に観測されるUFO、小惑星帯、そうした現実に見られるものの答えが、この小説の中に書いてあるような感覚が強くなっていったのです。

書籍紹介

月面で発見された宇宙服を着た人間「チャーリー」の遺体は、5万年前のもので、次いで木星の衛星ガニメデで発見された、人間と異なる巨人種の知的生命体が乗った宇宙船は、2500万年も前のものだったと判明します。次々と飛び込んでくる新事実を元に、これまで考えられていた人類の歴史が、定説とは全く異なっている可能性が高くなっていきました。ハントとダンチェッカーらは推論を重ねて、かつて太陽系にあった惑星ミネルヴァの人類が、5万年前に月ごと地球にやってきて、地球の現世人類になったのであると推察するに至ります。

星を継ぐもの
著者: ジェイムズ・P・ホーガン
ISBN:448866301X / 発売日:1980-05-23
出版社.: 東京創元社

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