男女の付き合いが次第にある帰着を求めて息苦しくなる、その息苦しさをまるきり感じないように見える土屋の、自由でのびやかな息… | 本で出逢った感動の名言
本で出逢った名言・名セリフ
男女の付き合いが次第にある帰着を求めて息苦しくなる、その息苦しさをまるきり感じないように見える土屋の、自由でのびやかな息づかいが、節子には憎らしくなった。彼だけが自分と別の空気を吸っているように思われた。節子の吸う空気にはすでに酸素が足りない。
美徳のよろめき より
そのセリフに感銘を受けた理由
夫と子供のいる女性が、独身の男性との模倣的な恋を手にとってからかってやるつもりだったのが、必死になって自分を見てきたはずの相手の男よりも、いつのまにか自分の方が夢中に執着し始めたことが分かる一文です。
主人公である節子は、ここへ来てもまだ自分が相手より上手でいるつもりでいるので、相手への憎しみを感じるのでしょうが、実際こうなっている状況では節子の方が恋に、つまりすっかり不倫の関係に夢中であるのだと分かります。
相手が実際にどうであれ、自分よりも相手の方が素っ気ないと感じることへの自重が足りていないのです。ちなみに節子は、自分で自分のことをそれほどバカな女ではないと自負している節があるのですが、皮肉にも、作者はそんな愚かな女心を丁寧に分析し描写しているのが滑稽で、印象に残る場面で好きです。
回答者:20代 女性
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