珈琲屋の苦悩 | [書評]美味しいコーヒーって何だ?
美味しいコーヒー探求の話と思いきや
この本は美味しいコーヒーを探求するために焙煎士オオヤミノルさんが3人に会いに行って対談します。鹿児島の井ノ上さん、鎌倉の堀内さん、青山の大坊さん。
井ノ上さんと大坊さんはオオヤさんよりも焙煎のキャリアが長く、それぞれ独自の考えを持って全国でも名人として知られる方々です。オオヤさんは深煎りのコーヒーを焦げたコーヒーと表しますが、表現を合わせるところから始まります。
表現に関して穏やかに正される感が伝わってきて、結局怒られに行ったのかな?と思えるほどです。その中で、コーヒーの焙煎度合いや工程、機械設備の話、そして素材としてのコーヒー豆の話がどんどん深くなっていきます。
堀内さんとの対談の章では同年代同士の思うところの話が展開していき、コーヒーに携わる方々のやり取りを盗み聞きできるような感じです。
言葉を合わせるところから始まる
生豆(きまめ)のグレードで言うと・・・
まずね、「きまめ」じゃなくて「なままめ」なんですよ。間違っているんです。
どういうことですか?「きまめ」では駄目なんですか?
駄目です。
井ノ上さんに会いに行って5ページ程度でまず言葉を正されていました。その後もコーヒーの味の表現を合わせる為に対話を繰り返しています。対談が進むにつれて近代のコーヒー事情が露わにになり、世界と日本のコーヒー事情がどう移り変わってきてるのかが二人の視点で展開されていきます。
コーヒーは多様性がある
大坊さんとの対談の章では表現を合わせていきながら、コーヒーの多様性の話になっていきます。焙煎機の種類や抽出方法の多様性、生産国のそれぞれの事情など様々な観点での多様性があって、そこにコーヒーが存在していくことが分かります。
また、どんなに名人でも焙煎はもちろん、生活上での紆余曲折があって今の形があることが分かります。
珈琲屋さんがどんな思いでどんなところにこだわって人々のコーヒーを作り上げているかが伝わる本でした。