作品から透けて見える「表現の自由」に対する想い | [書評]図書館戦争

図書館戦争
著者: 有川 浩
ISBN:4840233616 / 発売日:2006-02
出版社.: メディアワークス

「メディア良化法」という言論弾圧

1988年、昭和の終わりに、人権を侵害する表現を規制するために「メディア良化法」が制定されたという設定の元で平成とは違った「正化」という年号をもつもうひとつの現代の話です。

図書をはじめとするあらゆる創作物は、良化特務機関(メディア良化隊)によって取り締まられ、武力制圧も行われるという状況でした。

そんな中、弾圧に対抗したのが図書館でした。

検閲の強行に対し、公共図書館は、「図書館の自由に関する宣言」を元に「図書館の自由法」を制定し本を守るために武装した図書隊による防衛制度をつくります。そして、図書隊と良化特務機関との抗争となります。

メディア良化法成立から30年を経て主人公である笠原郁は、念願の図書隊へと入隊を果たし、指導教官である堂上篤と出会います。

大柄な郁よりも背が低い堂上は、責任感が強いため必要以上に厳しく指導することが多いのですが、郁を正しい方向へ導き、その成長を喜び見守るなど深い愛情を持っています。鬼教官の堂上と郁とは、多くの困難な事件や戦いに対峙しながら、仲間とともに助け合い、成長していきます。

業界の「表現の自由」に対する思い

図書を守るためとはいえ、銃撃戦にまで発展し、負傷者も出て、なかなかつらい状況だなと、理解に苦しむ部分もあるけれどそれ以上に堂上と郁を中心とする仲間とのかかわりが読み進めるごとに濃くなり、はまっていきました。

堅い抗争の記述の合間にみられる性格・外見とも真面目で実直な堂上と、純粋培養純情乙女・茨城県産である郁とのやりとりに「いいなあ」とつい読み直してしまいます。また、作者や業界の「表現の自由」に対する思いも感じられました。

本編4冊目のエピローグでは数年後、の2人が書かれていますが、気になるそこまでのいきさつや仲間の話は別冊の方で楽しめます。

文庫版の方には書き下ろしのおまけもついています。

映画化やマンガ化もされ、自分がイメージしていたのとキャストがぴったり!、あるいはこれは違うだろう!と比べて見るのも楽しそうです。

図書館戦争
著者: 有川 浩
ISBN:4840233616 / 発売日:2006-02
出版社.: メディアワークス

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