推理小説の傑作。予想がつかなかった真犯人の姿とは | [書評]そして誰もいなくなった

そして誰もいなくなった
著者: アガサ・クリスティー
ISBN:4151310800 / 発売日:2010-11-10
出版社.: 早川書房

第二次大戦の前に書かれた推理小説の傑作

この作品はイギリスの作家アガサ・クリスティが1939年に発表した推理小説です。

物語の舞台となる兵隊島は、実際にクリスティが居住していた土地の近くにあった島を参考としているそうです。

ある時何者かにより、兵隊島の邸宅に10人の人々がバカンスに招待されたところから物語は始まります。招待客は次々と殺害されていく事件が起こりますが、物語は戦前であるとのことで、近代的な通信装置や空を移動する手段もありません。兵隊島の人々は完全に隔離された空間で、助けが来るまでの間、殺人犯と共に同じ屋敷ですごさなければいけない展開となります。

果たして犯人は誰なのか、この点は最後までまったく予想がつきませんが、結局は物語の最後に犯人の告白という形で予想もしない犯人の姿が浮かび上がるのです。

深く描写された登場人物が魅力を高めている

本書の魅力は最初に紹介される登場人物たちの紹介から始まっています。

それぞれは兵隊島へやってくる時は、楽しい休暇を過ごすためだけのはずでしたが、物語が展開するとそれぞれの招待客は過去に大きなトラブルを抱えた経験を持っていることが判明し出して、招待客の誰もが連続殺人事件の犯人であっておかしくないように読み進めることができます。誰もがお互いに疑心暗鬼に陥るなかでも次々と殺人が起きてしまう、しかも誰が殺したか分からないというどうしようもない状況が続きます。

まったく予想がつかなかった真犯人の姿

孤島での密室殺人では、最後まで生き延びていた者が真犯人であるか、招待客意外の人間が島に密かに入り込んで連続殺人を敢行しているのだと想像できます。

実際に作品内でも、招待客らはそうした見方で推理するのですが、島に生存者が誰もいなくなってからわかる真犯人の正体には、あっと言わされてしまいます。それほど作品を読む中途の段階では真犯人の予測が難しいことでありました。そして真犯人が何故孤島にメンバーを呼び寄せ、全員を殺害したかったのか、事件を起こす動機についても意外なものです。

連続殺人事件の犯人が語った一文を引用すると、こんな性格の人物のようです。

私は、犯罪と刑罰に常に魅せられていた。探偵小説や推理小説を愛読して、自分で誰にも負けない巧妙な殺人方法を考案して、ひそかに楽しんだりもした

想像して密かに楽しむだけのはずだったのに、いつしか自分で殺人をしてみたくなってしまった、これが動機として取り上げられていました。

ヒントはここまで。続きは実際に読んでみてください。

そして誰もいなくなった
著者: アガサ・クリスティー
ISBN:4151310800 / 発売日:2010-11-10
出版社.: 早川書房

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