【残酷な神が支配する】親と愛の正体を読み解くもの | おすすめ漫画感想

残酷な神が支配する
著者: 萩尾 望都
ISBN:4091916112 / 発売日:2004-10
出版社.: 小学館

一巻から十巻までのシリーズです。漫画の舞台でもあるイギリスの森の中のように、靄がかかり、複雑に入り組んだ人の心がテーマとなっています。耽美で圧倒的な画力と、それだけでひとつの作品と言えるモノローグは物語に厚みをもたせ、一冊読み終わるごとに強い疲労感をもたらします。しかし、それ以上に、すべての人が探し求めていた答を見つけてくれそうな期待感をもたせてくれるのです。

物語の主軸は愛ですが、それは恋愛に限りません。異性愛、同性愛、友愛、中には、常人には理解の及ばない形をした愛が登場します。主人公の少年は、ゆがんだ愛に傷つけられ心を病み、苦しみながらたゆたい、再生していこうとします。本作の魅力は二つあって、一つは、親は何者かという問いに対して限りなく正解に近いであろう答を出してくれたところです。

本作のタイトルにある神とは、子どもにとっての親を示しています。親というものに疑問を抱いている方や関係に悩んでいる方とっては、まさに救いとなるような、答に近いものがシリーズにはあるのではないでしょうか。

もう一つの魅力は、キャラクターが記号化していないことです。普段ヒステリックなキャラクターはときに誰よりも理解のある行動をしますし、普段温厚な人格者でも、ピンチに追い込まれたときは相手を見捨てて逃げたくなっている場面が随所に描かれています。

人にはさまざまな面があり、温厚なものでも、見る角度によってなにか違う恐ろしいものにもなるというのです。しかし、一見別人のように見える生き物は紛れもない同一人物であり、人は相反する面を持ち生きているのだと本作は教えてくれるのです。

回答者:30代 女性

残酷な神が支配する
著者: 萩尾 望都
ISBN:4091916112 / 発売日:2004-10
出版社.: 小学館

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