メールでの売り言葉に買い言葉。不毛な言い争いを防ぐには? | [書評]「伝わる文章」が書ける作文の技術 名文記者が教える65のコツ


漠然とした文章の悩みに答えてくれた

“どうも伝えたいことが伝わらない気がする”と感じていました。

メールで人に文章を送る時は特にです。言いたいことはそんなに多くは無いけれど、その言いたいことにたどり着くまでに自分の文章があまりにも遠回りではないのかと。

ただ、そうわかっていても、簡素に省略すると素っ気無くなったり、また、冷淡な印象を与えかねない、と中々改善することができませんでした。そんな想いを抱えたままふらっと立ち寄った本屋さんで「作文の技術」というこの本を見つけたのです。

元・朝日新聞東京本社の編集局長、外岡さんが書かれているので、お名前は失礼ながら存じ上げなかったけれど、多少信頼できるかなという気軽な心で手に取りました。

正解。手にとって良かった。

と、いうのも事前に外岡さんに送られた一般の方のエッセイを添削していく、という形で内容は進められていたので何が間違っているかというのがわかりやすい。

そして「あ、自分も同じような文章の書き方をしている」と発見がしやすいのです。

文章の書き方も、もちろん基礎から教えてくださいますし、添削テーマも一つに着き見開き1ページ。多くて2ページと、読みやすく、また読み返しやすい。わかっているところは読み飛ばして、正す必要のあるところに付箋を貼り見返す、なんてことも出来て使いやすいです。

これは最後のページに行きついてわかって事ですが、「逆引き」が用意されていました。
「簡潔な文章が書けない」と思った時に何ページを開けばいいか教えてくれていたのです。

最初から最後まで、読者の悩みに寄り添ってくれる一冊だと思いました。

文章はコミュニケーション”手段”の一つである

文章の添削、改善を主としている一冊ですが、その合間にいくつかコラムが掲載されています。その中で、この本を読んでいる本来の意味、が明記された文章がありました。

コラム⑤の「メールの作法」にて

一度、文字になった言葉は、話し言葉と違って、いつまでも記録として残ります。相手が転送したり、第三者の眼に触れたりする機会も、まれではありません。

「売り事に買い言葉」は、メールの場合によく起こりがちです。こちらが少し冷静になって反省し始めたころ、相手が感情的なメールを送って返し、こちらも喧嘩腰になってエスカレートする、ということがあります。

~中略~

つまるところ、最も信頼できるコミュニケーションは、対面しかない、と私は思っています。そこには、すべての情報が、文字にできない表情や声音までを含め、開示されています。ちょっとした表情や、視線の温かさ冷たさで、相手への理解を補う情報は、無限にあります。

 メールは、対面できない場合の補足であって、その代替え手段にはなりません。

喧嘩腰のメール、とまではいかなくても意見がすれ違ったり「どうして伝わらないんだろう」と悩んだり相手のせいにしたりしましたが、文章の伝達力だけを信頼して、相手の顔を見ていなかったのだなと気づかされたのです。

人の顔を見て話す、というのは当たり前なのかもしれませんが、パソコンに向き合っているときはどうしても機械作業になりがちです。

仕事仲間でも、友人家族、と親しい間柄でも、私の文章を受け取った側の気持ちを想像することは大変重要です。気持ちを推し量ったうえで、正しい、そして伝わる文章を提示することの重要性が理解できます。


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