分類はライトノベルですが…かなり深い | [書評]カラワンギ・サーガラ 完全版〈1〉密林の戦士(ラグ・カオヤイ)


分類はライトノベルになっていますが…

1995年に初出版された、一応ライトノベルに分類されるSF小説です。とは言えSFとひと言には言えないような、世界観のある小説です。

作者が自身で言っている通り、非常に力の入った小説ですので、気楽にとっつける感じではありません。ただしこの作者がその時の全力で書いたと言うだけに、かなり読み応えのある小説になっています。

物語はある惑星の調査に訪れた地球人(テラ)中心の調査隊、製薬会社の違法な調査隊とその調査隊メンバーの女性の姪である少女、それを取り巻く人々の思惑と好意。

それにその惑星の先住民との間での交流、先住民に神と呼ばれる存在とその神に選ばれた、カオヤイと呼ばれる住民の中で特殊な力を持つ一握りの存在。

それらが縦糸と横糸を絡ませるようにしながら、物語は進んでいきます。

時に読みづらいと感じることもあるかもしれません

世界観や人々に対する筆致が、大変に緻密に描かれているので、読み手も集中が必要になる部分が多々あります。

雨季と乾季はあるものの、熱帯性雨林気候の惑星マサラは、多くの祝祭行事によって日常生活が区切られて、変化が生まれると言っても過言ではない。

こういった描写が各所にちりばめられているので、読み手は時に読み飛ばしてしまうこともあるかもしれませんが、これらを熟読してこそ作者が張った伏線を、その後に楽しむことができるのです。

中盤以降物語は、思いもかけない方向に転換していきますが、それもまた前半の細かなストーリーに支えられてこそですので、集中して読み進めることをお勧めします。

読みごたえは半端ではありません

ライトノベルと言う、ちょっと空いた時間に軽く読める小説と言う寒中からは、逸脱している小説かもしれませんが、それゆえに何度も繰り返し味わうことの出来る小説でもあります。

この作者はこの時代、同小説を書いていくか悩みに悩んだと後に言っています、自分の書きたいものと読者の求めるものの差異に、スランプにさえなったと言うことですが。

今読み返してみると、本当に全力全身で書かれた小説だと伝わってきます。

初出が1995年、この完全版が2000年の発行ですので、手に入れるのがいささか難しいかもしれませんが、読んで損の無い小説の一つであることは間違いありません。


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