夜食の用意はできていますか? | [書評]異世界食堂 1

異世界食堂 1
著者: 犬塚 惇平
ISBN:4074113295 / 発売日:2015-02-28
出版社.: 主婦の友社

どうしようもなく腹が減る小説

料理を描写した小説を読んでいると、多かれ少なかれお腹が空くものですが、これはその中でも特段にお腹が空きます。

舞台は異世界。ライトノベルではおなじみの、いわゆるファンタジー的な異世界です。魔法あり、ドラゴンあり、エルフやドワーフあり。そこに七日に一度出現する「洋食のねこや」の扉。

描かれる料理は、日本人にとってはごく普通のメニューです。洋食屋さんによくある、ひょっとすると昨日のお昼に食べたかもしれないメニュー。

それが異世界人にとっては初めての驚きとともに、丁寧に丁寧に描写されます。まるでこちらの食欲をかきたてるのが目的かのように。「まるで」というよりも、まさにそれが目的なんでしょうけれど。

ただのメンチカツをここまで……

複雑な旨みを持つソースと、さっぱりとした酸味のレモン。それが加わることで、先ほどまで天上の美味と思っていたメンチカツがまだ『物足りない』代物であったことをサラは悟った。

たっぷりの肉汁と油、甘いオラニエ。その料理に足りなかった要素である酸味。それがソースという調味料と、レモンという甘みがまるでなく酸味のみを持つ果物の汁が加わることで付与され、メンチカツは完成に至った。

メンチカツに始まり、照り焼きチキン、エビフライ、ミートソース、オムライス、カレーライス……夜中に読むと夜食が欲しくなること請け合いです。

肩の凝らない小説

いわゆるライトノベルなので、ジャンルとしての好き嫌いはあるかもしれませんが、ファンタジー系の世界観を許容できる方にはお勧めです。

一話一話が短く、エピソードの骨子もわかりやすい、ただひたすらにそのメニューの美味しさを描写するだけのシンプルな小説なので、肩も凝りません。

ただ、お腹は空きます。

異世界食堂 1
著者: 犬塚 惇平
ISBN:4074113295 / 発売日:2015-02-28
出版社.: 主婦の友社

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