“本当は怖いグリム童話”をラノベで読む | [書評]断章のグリム 1巻 灰かぶり

断章のグリム〈1〉灰かぶり
著者: 甲田 学人
ISBN:4840233888 / 発売日:2006-04
出版社.: アスキー・メディアワークス

神様は夢をみる

悪夢、そしてお化けや幽霊。怖いものはこの世界にいっぱいあるけれど、その根源がひとつだとしたら?それは、とても怖いことだと私は思います。

本当は怖いグリム童話というのは有名です。童話はもともと、口伝民謡をグリム兄弟が集めたものです。このお話は、そんなグリム童話と怪異。そして、ふつうではないことを知っているから普通であろうとする少年のお話です。

白野蒼衣は普通の高校一年の男の子。少し控えめな印象をうけるけれど、いたって普通です。彼は、頼まれると断れない性格から学校を休んでいる女生徒のもとへプリントを届けるようにと担任に頼まれます、そして、そこで目をえぐり取られた女性と、黒いロリータ服の美少女時槻雪乃と出会います。この出会いが、彼を普通ではない出来事だらけの日常へと誘うのです。

【シンデレラ】は何を思う?

クリック?
クラック!
さあ、今日は『シンデレラ』のお話をしましょう。

いきなり巻き込まれた蒼衣は鹿狩の説明を受け、雪乃たちのような存在と、神様の存在を聞きます。わけのわからないまま巻き込まれ、怖い目にあったわりにすぐにそれを受け入れてしまう蒼衣。そしてそんな彼をいらいらとしながら、守る雪乃。のんきな蒼衣の態度が泰然としており、雪乃にとって憎むべき怪異をすんなりと受け止めるそんな態度に感情を涙手ながらも守ります。まったくかみ合っていないのに、そばにいて同じものを見る二人。

「―――見つけたわ。”異端の灰かぶり”」

人が意識しない、交じって自我もないそこのそこで眠る神様が悪夢を見るとそれは災いの泡として世界に浮かぶ。その泡が大きいと、まるで童話をかたち取るように怪異となる。蒼衣の同級生はその神様の悪夢「泡禍」を具現した。

周りを侵食し、殺してしまうほどの大きな禍いの泡。物語の配役と、流れそして意味を理解したときに蒼衣の持つ断章が目覚める。それは、優しくそしてとても残酷な力だった。

断章のグリム〈1〉灰かぶり
著者: 甲田 学人
ISBN:4840233888 / 発売日:2006-04
出版社.: アスキー・メディアワークス

あわせて読みたい