目的地に行くだけのために、人間って歩くわけじゃない | [書評]週末、森で

週末、森で
著者: 益田 ミリ
ISBN:4344017307 / 発売日:2009-10
出版社.: 幻冬舎

どんな内容なの?

30代半ばの独身女子・早川さんが東京から田舎に移住し、たまに遊びに来る友だちと一緒に森を歩いたり、カヌーに乗ったりする日常を描いたお話。

早川さんは、読者プレゼントで車が当たったことをきっかけに田舎に引っ越してしまう。ところが、家は駅前だし、野菜を育てる気はないし、それどころかお取り寄せを楽しみにしているし…。そんなマイペースな早川さんの元にやってくるマユミちゃんとせっちゃんとのあたたかな、ほのぼのとした会話や体験を垣間見ることができる。

そうかもなぁ~と思わされる

絵は、のほほんとしていて特に上手というわけでもない。冒険やらバトルやら派手な描写は一切ない。しかし、引き込まれる魅力がある。その空気感や「間」。マユミちゃんやせっちゃんの悩みに共感し、早川さんの言葉にハッとさせられる。早川さんの言葉は、せかせかと過ごしがちな私たちの中にしみこんでくる。

森を散歩する早川さんに歩くのが遅いというマユミちゃんに早川さんはこう言う。

「目的地に行くだけのために、人間って歩くわけじゃない」

また、カヤックに乗って湖に浮かびながら早川さんは言う。

「宇宙のこと想像できるのって この森の中でも 人間だけなんだよ
 ムダがなくなると人間らしくないのかもねえ」

言いようによっては説教くさくなってしまうような言葉もあるが、決して説教がましくない早川さんの言葉や見方は時に胸をぎゅっと締め付けられ、時にハッとさせられる。

肩ひじ張らず、ゆったりと本を読みたい人におすすめ

毎日同じことの繰り返しで疲れたなぁ~という人。ちょっと一休みしたい人。肩ひじ張らず、ゆったりと本を読みたい人。そんな人におすすめです。早川さんの達観している風な様子だけでなく、マユミちゃんやせっちゃんの都会人らしいイライラや悩みに共感したり癒されたりするのではないだろうか。ちょっと森の中でも散歩したいな、と思ったら、ぜひこの独特な「益田ミリワールド」に足を踏み入れてほしいと思う。

週末、森で
著者: 益田 ミリ
ISBN:4344017307 / 発売日:2009-10
出版社.: 幻冬舎

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