アクションあり、謀略あり、ラブコメでもあり | [書評]図書館戦争 図書館戦争シリーズ

図書館戦争
著者: 有川 浩
ISBN:4840233616 / 発売日:2006-02
出版社.: メディアワークス

図書隊との闘いや組織・政治的な謀略…

舞台は日本。昭和の最終年度に成立した「メディア良化法」を根拠にして政府の言論統制ともとれる「検閲」がのさばっていた。そんな検閲に唯一対抗できるのが「図書館の自由法」である。検閲に対抗すべく武装組織になっていった図書隊に新人防衛員として配属された笠原郁(かさはらいく)が、愚直に純粋に図書を守ろうとして奮闘する…。

不適切な文言が含まれているから、という理由で本を狩っていく「メディア良化委員会」とその代執行組織である「良化特務機関」。それらと図書隊との闘いや組織・政治的な謀略、郁とあこがれの王子様との恋路など見どころが多い物語である。

図書隊という組織と国家との闘いが見どころ

作者の有川浩といえば、ラブコメを得意としており、今回もその要素が散りばめられている。しかし、ただのラブコメではない。主人公・郁の恋模様ももちろん見どころの一つではあるが、それ以上に図書隊という組織と国家との闘いが見どころである。

図書館の自由に関する宣言
一、 図書館は資料収集の自由を有する。
二、 図書館は資料提供の自由を有する。
三、 図書館は利用者の秘密を守る。
四、 図書館はすべての不当な検閲に反対する。

図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

銃火器を使って検閲対象の図書を没収しようとする「良化特務機関」に対抗して、検閲など許さずあらゆる図書を守ることを信条にしてこちらも銃火器を使う組織となっていった図書隊。銃火器を使う以上「正義の味方」ではないと自覚しながら図書を守ろうとするその信条とその闘いぶりに魅入られてしまう。

憲法にもある「表現の自由」と相反するこんな法律が成立してしまったのは、メディアの報道姿勢と国民の政治への無関心が原因であると語る登場人物の言葉は、現代の日本人にも痛いのではないだろうか。この本を読んでいると、「こんな世界は嫌だ」と思ってしまうが、こんな世界になる可能性が低くはない、と危機感を持たせてくれる作品でもあると思う。

個性的なキャラクター

設定だけ見るととても重い内容のようであるが、個性的な登場人物たちの軽い掛け合いや豪快な考え方、そして作者特有の軽妙な語り口調で、その重さがとても軽減されている。難しい考え方や専門用語が飛び交う中で、「おバカな」質問をしてしまう郁は、読者と同じレベルに立って読者の疑問を解消するきっかけを作ってくれる。そして郁を取り囲む上官や隊長、同僚との掛け合いは、緊張感もあるがユーモアもたっぷり含まれている。

政治的な読み方ももちろんだが、キャラクターそれぞれの生き生きとした人生を読むことも楽しめる作品であると思う。

図書館戦争
著者: 有川 浩
ISBN:4840233616 / 発売日:2006-02
出版社.: メディアワークス

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