海の不思議を読み物として学べる入門書 | [書評]海の教科書 波の不思議から海洋大循環まで


海の多くの不思議を読み物として堪能

ブルーバックスだということもありますが、著者は「まえがき」で、本書は専門書ではなく、読み物となる入門書にしてあると書いてあります。海洋学、実際には著者が海洋物理学の研究者のため、ほとんどが海洋物理学の内容になっていますが、読みやすく、小難しい数式は登場しません。すこーし、私として「難しいかな」と思う記述についてもよくよく読めばわかりますし、またブルーバックスとしては、簡単な部類に入ります。

本書を読むことのメリットは、「海」について多くのことを知ることができる点です。波はどうして起きるのか?この本を読むと分かりやすく答えられるようになります。

本書の構成

下手に私が解釈するより、章題を参照した方がわかりやすいと思います。

第一章 海洋、その面白さと重要性
第二章 海を調べる
第三章 海水の性質
第四章 海の姿が明らかになってきた
第五章 海洋大循環はなぜ起こるのか
第六章 海の波の不思議
第七章 潮汐とそのメカニズム
第八章 エルニーニョ現象とその仲間たち
第九章 凍る海

各章では、それぞれの歴史的事象や事故や、研究・調査によって得られたデータから得られる事実、著者の示唆が書かれています。

海洋調査船「みらい」と、原子力船「むつ」は同一の船!?

まず、変わったところでは、「エルニーニョ」と「エルニーニョ現象」は違います。私は、同一視していました。正しいのは、さてどちらでしょう?(本書でわかります)。また、第二章で海洋調査船「みらい」が登場しますが、元はあの原子力船「むつ」だったとは全然知りませんでした。びっくりです。

また、天気予報で伝えられる波の高さは、「有義波高」というもので、平均よりは高いものの、有義波高より高い波は発生しうるということです。その頻度は低いがものすごく高い波により、事故も起きています。

そして、最も注目は津波です。著者は東日本大震災を踏まえて、津波のメカニズムと警鐘を述べています。みなさんも発生メカニズムをご存知の方も多いでしょう。それを分かりやすく、海洋物理学的に説明してくれています。

海の世界は、まだまだ謎だらけ

子供のころに海に興味を持っても、大人になってからはレジャーの場ぐらいにしか思っていなかった私です。しかし、海については、まだまだ謎だらけなのです。地球の海のあちこちで起きている不思議な現象を、本書で知るだけでも、知識が深まるってものです。


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