多くの人に読まれ続ける不朽の名作! | [書評]時をかける少女 〈新装版〉

時をかける少女 〈新装版〉
著者: 筒井 康隆
ISBN:4041305217 / 発売日:2006-05-25
出版社.: 角川書店

劇場版アニメ「時をかける少女」の原作

最近ではアニメのほうが有名かもしれませんが、そのアニメのもととなった小説です。小説は“時間”をテーマとした短編集となっています。表題作である「時をかける少女」は、タイムリープしてしまうなど共通した部分もありますが、アニメとは一味番う物語となっています。

また、表題作以外に収録されている作品に関しては全く違う物語となっているので、アニメを観たことがあると言う人にもオススメの1冊です。どの収録作品も学生が主人公となっており、青春の青臭さや甘酸っぱさを思い出させてくれるような、爽やかな1冊だと思います。

タイムリープの原因を探るために、タイムリープをする主人公

表題作の主人公である芳山和子は、理科実験室を掃除しているときに起こったあることをきっかけにタイムリープしてしまいます。彼女は友人や理科の教師である福島先生に相談し、自分の身に何が起こっているのか、どうすれば普通に戻ることが出来るのかを探ろうとします。

「わたしは、自分だけこんなおかしな能力をもっているなんて、いやなんです」

福島先生はそういって和子にうなずいてみせた。

「わかるよ、その気持ちは…。よろしい。そうすると君は、君の持っている能力をつかって、もう一度四日前の、あの理科実験室での事件のあった現場にひき返してみる必要があるな」

「ええっ!」

このようにして、和子の“普通に戻るため”のタイムリープが始まります。自分が手にしてしまった不思議な能力の原因を探るために、心細さを抱えながらもたった一人で過去へとタイムリープしていく主人公の逞しさには感心させられます。

時代設定に反して、古臭さを感じさせない名作

本書の時代設定は、携帯電話などはまだ普及しておらず、家庭の固定電話も黒電話が使われていたような時代となっています。登場人物の語り口調も、どこか昔懐かしい雰囲気があります。

読み始めは、いろいろな点で“時代遅れ”であったり“古臭さ”であったりを感じて、少し読みにくいかもしれないと懸念しましたが、読み進めていくとそんなことは気にならないくらいあっという間に物語に引き込まれてしまいました。

時をかける少女 〈新装版〉
著者: 筒井 康隆
ISBN:4041305217 / 発売日:2006-05-25
出版社.: 角川書店

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