互いを大切に思う夫婦のカタチ | [書評]泣き虫チエ子さん 1
大切な人と過ごすなんでもない日常が最も大事
くつの修理屋さんをしている夫のサクちゃんと会社で秘書をしている妻のチエ子さん。普通の夫婦が織りなす何気ない日常を描いてます。
ケンカしたり笑いあったり、そんな何気ない日常を一緒に過ごせることを大切に思っている夫婦に触れると、ことらまでそんな何気ない日常が愛おしく思えてきます。大切な人と過ごすなんでもない日常が実は何より大切だと気付かされるやさしいお話たちです。
ゆるやかに描かれる二人の日常
チエ子さんもサクちゃんも本当にささいなことを愛おしく思ったり美しいと思ったりすることができます。
二人は仕事終わりにスーパーで待ち合わせて夕飯の買い出しをするのが日課です。
チエ子さんは サクちゃんがカートを押す その後姿が好きでした
カートのカゴの中には ふたりの生活が入っています
大切なものを運んでいるって思うと 幸せな気持ちになるのでした
読んでいると、確かにそうだな…と思わされるけれど、自分の生活の中ではなかなかそんな風には思えません。そんな見方や考え方がたくさんつまっています。
もし自分がいなくなったらサクちゃんは…と考えて悲しくなってしまうチエ子さんや、そんなチエ子さんのちょっとめんどくさいところも愛おしいと思っているサクちゃんの、無理しない、縛りつけないゆるやかな夫婦の日常が、益田ミリ特有のテンポの良さでつづられていくのです。
「ひとり」じゃなく「ふたり」
「サクちゃんにとって幸せってなんだと思う?」
「キミがいて 仕事があること」
このサクちゃんの答えを聞いて、チエ子さんは胸がいっぱいになります。自分のことを言われたということよりも、サクちゃんが幸せって何?の問いに「即答した」ことに胸がいっぱいになったのです。サクちゃんがそのことに幸せを感じているからこそ、と感じて嬉しくなったのかもしれません。
ふたりはお互いに縛りつけたり、干渉しすぎたりしません。そりゃあぶつかり合うこともあるけれど、相手を自分の思うとおりにしようとは思っていません。でも、確かにふたりはお互いを大切に思っていて、「ふたりで」過ごせる時間を大切にしています。こんな夫婦ステキだなぁ~と思えてしまうかもしれません。