30年以上続く、天賦の少年「チンミ」の成長ストーリー| [書評]鉄拳チンミ

鉄拳チンミ
著者: 前川 たけし
ISBN:4061736302 / 発売日:1984-10
出版社.: 講談社

天賦の才を持つ少年「チンミ」の成長ストーリー

舞台は中国。天賦の才を持つ少年「チンミ」が大林寺拳法に入門し、厳しい修行に臨み、大きく成長してゆく話。

姉が切り盛りする定食屋を手伝うチンミは、素手で箸を百人前作ったり、離れたところにある川から水がめまで桶を投げるという手法で水を運んだりと驚くようなことをしてのける。さらに、兄弟のようにして一緒に育ったサルの「ゴクウ」と毎日森を走り回っていた。そんなチンミは大林寺の老師に「百年に一人の拳精」ではないかと、大林寺への入門を勧められる。

入門を果たしたチンミはライバルや恩師の中で揉まれ、厳しい修行に耐え、成長を続けていく。

数々の恩師たち

チンミは身体能力や勘に優れ、才能あふれる少年だった。しかし、そんなチンミも初めから強かったわけではない。大林寺の大僧正の体には一切触ることができず、出会う恩師たちにまだまだだと言われ続けた。それでも腐ることなく、出された些細なヒントについて一生懸命考え、途方もない練習を重ねていく。

拳法を極めるうえで大切なことを一つ一つ着実に体得していくチンミ。その陰にはチンミにわかりやすいヒントを出すのではなく、つまずかせ、考えさせるよう仕向ける恩師たちの導きがあった。たくさんの師に出会うチンミだが、彼の明るさが周囲を和ませ、人を惹きつける。多くの師たちもそんなチンミの人柄に惹きこまれていく。

この どこかぬけたような明るさがみょうに人の気持ちを和ませる…おもしろい男じゃ

そんな師たちは、強くなり時には慢心してしまったりもするチンミに、やんわりとその愚かさを気付かせ、人として拳法家としてどうあるべきかを見せ、伝えていく。

明るく素直なチンミが、出会う人や事件からどんなヒントを見つけてどうやって解決していくのか、先が気になって仕方がなくなる。

チンミのひたむきさ

チンミの魅力は、明るく天真爛漫なところだ。はじめのころのチンミは体を動かすことが大好きで座禅や勉強は苦手だった。しかし、何かを見つける時の集中力や何かを身につけようとするときのひたむきさにも目をみはるものがある。

その才能とひたむきさでめきめきと成長するチンミはとうとう皇帝にも気に入られ、都に招待される。そんな大物になってもチンミは少年のころのまま、純粋でひたむきな一面を捨て去らない。

多くの敵や獰猛な動物と相対するチンミの成長を是非見ていただきたい。

鉄拳チンミ
著者: 前川 たけし
ISBN:4061736302 / 発売日:1984-10
出版社.: 講談社

あわせて読みたい