死にいくために・・ | [書評]断章のグリム〈15〉ラプンツェル〈下〉
童話は悪夢のかたち
死にたいのに、死ねないのと。死んだのに、生き返れるのと。
どちらがつらく、どちらが幸せなのだろうか。
そんな疑問が、悲しい気持ちと一緒に生まれてくるお話です。
ラプンチェルの話になぞらえた泡禍の町で、続く悲劇に備える蒼衣たちの前には再び瑞姫を失った馳尾勇路が現れます。
蒼衣に対する深い憎悪を抱えて。
まとわりつく【死】
「瑞姫が死んだ原因も、お前らがここに来たってことも、俺に教えたのはお前らの世話役だろうが!」
手が引っ張るままに娘を探しに行く妻の葉子。
いなくなった葉子を探し歩く夫。そして、知らぬままにも、母を探しさまよう娘。
まるで、塔から荒れ野へやられたラプンチェルを悲しみ、塔から落ちて目をなくしそれでも探し歩く王子のように。
ラプンチェルの話は、異界へ行く話。
王子様は、ラプンチェルを探しに黄泉の食べ物を食べて彼女を探しにいく。
それは死をまとった話。死者に会いに行く話。
一番、死を望んでいるのはだれ・・?
「予言された『ラプンチェル』でずっと語られているのは、愛する人のために掴んだものが間違っていたという、たった一つです」
馳尾のせいで大けがを負った蒼衣のもとに応援で駆けつけた世話役の神狩屋。
彼は治療のために、死ねない自身の断章「八尾比丘尼」の身を削り与える。
それは、治療のためという名目で蒼衣に盛られていく毒だった。
いばら姫のあと、ずっと断章の元となる葉耶を見ていた蒼衣。
そして今回のラプンチェルの具現は、愛する人をまだ取り戻せるかもしれないと考えなければ配役になれる。
読み解く蒼衣を守るためにいままで関わったロッジのメンバーが駆けつける。
あわせて読みたい