夜回り先生って? | [書評]夜回り先生と夜眠れない子どもたち

夜回り先生と夜眠れない子どもたち
著者: 水谷 修
ISBN:4861130018 / 発売日:2004-10-10
出版社.: サンクチュアリ出版

敵がいる??

この本の筆者である水谷修さんは「夜回り先生」と呼ばれています。

ぼくが中学生のころ地元の中学に「夜回り先生が来る!!」とのことで噂になりましたが、あまりピンときませんでした。何をしにくるのか分からなかったからです。きっと講演をしにきたのでしょう。

夜回り先生とは夜間高校の教師をしながら深夜パトロールをしてまわる、水谷修という元高校教師です。

この本はパトロールで会った子供たちとの回想録という形をとっています。登場する子どもたちはみんなこれほどまでにという酷い目にあっていてそれらがドキュメンタリー風に書かれています。漠然と涙をさそうような感動ものと、この本が明らかに違うのは夜回り先生には、はっきりとした「敵がいる」ということです。それは「悪いおとなたち」です。

夜の街は薄汚れている。心ときめくような彩りも、街でかけられる優しい言葉も、子どもを食い物にしようとする悪意に満ちたものばかりだ。

子どもが健康的に、安心して遊べる場所なんてどこにも存在しない。

一方でほとんどの大人は彼らを無視する。ひいては恐れ、忌み嫌い、社会から抹殺しようとする

敵がいなくなる。

「そのような大人を許すことはできない」と前置きしたうえで語られるエピソードは夜回り先生の動機さえ理解できればどこまでも胸に迫るものがあると思います。

というより、個々の子どもたちのエピソードは「夜回り先生」を抜きにしてもそれだけで、衝撃的なものばかりです。一般にボランティアとか慈善活動をしつづけるのは難しいことだといわれますが、筆者は「夜回りシリーズ」4巻で、子どもを苦しめる「大人たち」を憎むことでモチベーションを保ってきたと綴っています。

そうやって、物議をかもしながら深夜パトロールをつづけていた夜回り先生は、4巻で「実はおとなも子どももみな苦しんでいるのかもしれない」と内心を吐露しています。

「夜回り先生と夜眠れない子どもたち」はそのシリーズの1巻です。

いまとなってはテレビでコメンテーターとして見られる夜回り先生がおそらくいちばん子どもたちに対して同情的なスタンスで書いた本です。

夜回り先生と夜眠れない子どもたち
著者: 水谷 修
ISBN:4861130018 / 発売日:2004-10-10
出版社.: サンクチュアリ出版

あわせて読みたい