愛犬との日常を綴ったエッセイ | [書評]雨はコーラがのめない

雨はコーラがのめない
著者: 江國 香織
ISBN:4479681566 / 発売日:2004-05
出版社.: 大和書房

著者らしい、愛犬との安らかな日々

著者が過ごす愛犬との日常を綴ったエッセイです。本書はよくあるペットとの暮らしを語った読み物とは少し雰囲気が違うように思います。ペットを飼っている人の中には、ペットも家族の一員として、まるで子供の様に可愛がる人はたくさんいるでしょう。

しかし、本書の著者はまるで愛犬が友人であるかのように接している印象でした。相手が犬でも、自らと対等な関係として接しているような様子は、一般的な“愛犬との日々”とはまた違った面白さがあります。また、著者のファンである私としてはその意外性が逆に著者らしいなと感じ、想像以上に楽しく読むことが出来ました。

アメリカン・コッカスパニエルの雨

雨と言うのは著者の愛犬で、2歳のアメリカン・コッカスパニエルです。本書は、著者と雨の出会いからこれまでの日々について綴られています。彼らはよく一緒に音楽をきくそうで、その理由は犬である雨と人間である著者が一緒に出来ることが少ないためだというものです。

ここも、とても著者らしいなと感じたのですが、普通ならひたすらボール遊びをしてあげるだとか、散歩に連れて行ってやるだとか、何か犬が喜びそうなことをしてしまいがちですしそれはそれで楽しいと思うのですが、著者は決して犬に全面的には合わせないという部分が何だか可笑しくていいな、と読んでいて微笑ましく感じました。

それでも著者と雨の関係は大変良好そうで、著者にとっての雨の存在が大きいのはもちろんのこと、雨も著者が大好きなようですので、いつか自分が犬を飼ったとき、こんな風に友達みたいになれる愛犬に自分も出会ってみたいなどと、つい想像を膨らませてしまいました。

愛犬の誕生日にCDをプレゼント!

著者は愛犬の誕生日に、愛犬好みの音楽CDをプレゼントします。普段の著者は好んできかないけれど、たまたまきいていたオペラ、しかもソプラノにのみ反応をしめす愛犬のために選んだ、雨のための音楽です。

雨の一歳の誕生日に、私はエリザべス・シュワルツコップのアリア集を買ってやった。雨の持っている、たった一枚のCD。私の好みから言うと強烈すぎる歌唱なのだけれど、雨は気に入ったようだ。

このことがきっかけとなり、著者と雨は一緒に音楽をきくようになったそうです。本書は、そんな風にして好みは異なるけれど共通の趣味をみつけたり、仲良く過ごしたりする著者と愛犬の日常を綴ったエッセイとなっています。

雨はコーラがのめない
著者: 江國 香織
ISBN:4479681566 / 発売日:2004-05
出版社.: 大和書房

あわせて読みたい